ロシアの美しい歴史としであるサンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館。世界三大美術館のうちの一つに数えられる広大な規模の展示施設です。
収蔵作品数もおよそ300万点と圧倒的ですが、特筆すべきはその建物。世界遺産に登録された豪華絢爛な建物は、それ自体が貴重な芸術的建築物です。なかには、四方金塗りの部屋なども。
建物そのものが芸術品
エルミタージュ美術館は、「小エルミタージュ」、「旧エルミタージュ」、「新エルミタージュ」、「エルミタージュ劇場」、「冬宮殿」の5棟の建物に分かれています。本館の「冬宮殿」は、ロマノフ朝時代の王宮です。「美の殿堂」や「ロシアの宝石」とも評されるその建物はまるで、それ自体が巨大な芸術作品のような美しさ。筆者も訪れたことがありますが、本当に、建物だけで満足してしまえそうな見応えでした。
元々王宮だった建物を利用している美術館には他にルーブル美術館がありますが、残念ながら現代的な改修を重ねたその建築に王宮の面影はあまり残っていません。それに対し、エルミタージュ美術館は一歩足を踏み入れれば、鮮やかな原色や金のロココ調の室内装飾に満ち満ちた壮麗な世界が広がっており、まさに王宮といった佇まいです。
エルミタージュ美術館の歴史
エルミタージュ・コレクションは、1764年にエカチェリーナ2世がドイツの画商ゴツコフスキーから美術品を買い取ったことから始まりました。
エカチェリーナは、冬宮殿の隣に自分だけの専用の美術品展示室を建設しました。それがいまの「小エルミタージュ」です。ちなみに、「エルミタージュ」という言葉は、当時のフランス貴族のプライベートの離宮を意味します。続く1787年には、数が増えたコレクションを収納するために東隣に施設が増築されました。これが、旧エルミタージュです。エルミタージュ劇場もこの頃に建設されました。
当初は一般公開されていませんでしたが、1863年に初代館長となったゲデオーノフにより、サンクトペテルブルクの一般市民にも公開されました。同時期に、新エルミタージュが増築されています。
エルミタージュ美術館は、1917年のロシア革命後には、貴族から没収されたコレクションの集積所となりました。その翌年、冬宮殿に収納していた研究資料や組織を建物共々、エルミタージュ美術館として統合することが決定され、それは第二次世界大戦後に完了しました。